教員歴35年が実践していた保護者と担任の良い関係の作り方㊙テクニック4選を解説します!

保護者とのいい関係つくり方 若手教員、教務の方へ

教員歴35年が実践していた保護者と担任の良い関係の作り方㊙テクニック4選

テクニック4つとは

  • テクニック①いい関係の基盤作りのために定期的な電話連絡をする
  • テクニック②面談は認識のずれが生じないように原則複数の教員同席でする
  • テクニック③生徒の情緒不安定に関わる時は正しい情報共有のために両親と面談する
  • テクニック④学校不信の時は時間をかけて話を聞くことで不信の原因をつかむ

教員時代、保護者との関係はいいものでした。
私のどんな接し方がいい関係を作っていたのか、
整理してみると4つにまとめられます。

テクニックというより、心がけや原則、約束事項みたいなことです。

順に解説していきます。

保護者とのいい関係

いい関係を作るには原則があり、私の場合は4つにまとめられます。

テクニック①いい関係の基盤作りのために定期的な電話連絡をする

良い関係を作るうえで、
基盤(地固め)となります。
詳しくは以下の2つです。

  • 電話連絡をするときのポイントは親にとって嬉しい話題を提供できるように普段から「生徒良いとこメモ」を作っておく
  • 電話連絡する頻度はどれくらいがおすすめ?
学期一回を目標に電話連絡をしました。
勤務時間外の仕事ととなりますが、
保護者と関係がこじれた場合、
この2倍3倍の労力を要することになります。

学校行事としての
定例の家庭訪問、学級懇談会、三者面談だけでは
接する回数(機会)が少なく
いい関係は作れません。

また、学校での子どもの健やかな成長の様子を連絡してもらえることは大変嬉しいことだから、
良い関係を作るうえで基盤(地固め)となります。

補足になりますが、

上記の2つとあわせて、
教育関係の諸機関(教育相談機関、思春期外来といった医療機関)に関しても情報を集めておくことは
保護者とのいい関係を作る上でアイテムとなります。

心の不調・・・
要因は様々ですが、
今の生徒は誰しも心の不調を持ちやすい、訴えやすいです。親として学校に行きずらくなったという現象がみられると大変不安になります。そんな時、
カウンセリングが受けれる機関や思春期外来といった医療機関の情報を持っていると
いい関係つくりに役立ちます。
ただし、受診を進めるのでもなく、紹介をするのでもないです。
これまでの経験、事例として情報提供のみをするのが大事です。
学校(教師)が病気であると決めつけることになると
保護者との関係はいいものにならないからです。

単なるリストではなく、
他の生徒のケース、
他の教員がかかわったケース、
事例から情報を集めておくことがポイントです。
養護の先生が多くの情報をもたれています。

良い関係の基盤つくり

保護者とともに生徒(子ども)の健やかな成長を

電話連絡をするときのポイントは親にとって嬉しい話題を提供できるように普段から「生徒良いとこメモ」を作っておく

生徒と接していると、
「すごい!」「これは褒めたいこと」と
いった場面に出会うときがあります。
走り書きでいいので、
メモをしておきます。
帰りのショートホームルールが終わり、
部活に行こうと学級を出ながら、
B子さんが
「家で、テレビばかり見てもっと勉強しなさい!言われる。
もう親と顔を合わせたくない」
と友達A子さんに愚痴を言っています。A子さんは
「大丈夫大丈夫!
Bちゃん授業が始まる前に、
CちゃんやDちゃんに宿題のわからないところ教えてたじゃない。
ちゃんと宿題やっているんだから、
そのことお母さんにいいなよ 」B子さんは
「そうか、
CちゃんやDちゃんに宿題のわからないところ教えてるよと
言ってみるかな」
スッキリした表情で、
部活に行きました。
A子さんは、
友達の愚痴を聞いてあげていた。
B子さんは、
友達に勉強を教えてあげていた。
(教えてあげられるだけの勉強を家でしていた)

こういう内容のメモで十分です。

後で記録しようと思っていたら、ほぼできません。

このメモには、
3つの利点があります。

1つ目は、次に述べる保護者へ電話する時のネタになること
2つ目は、生徒への観察力が高まり、「すごい!」「これは褒めたいこと」が不思議なくらい一杯見つけられるようになります。
3つ目は、教師の電話で親が嬉しい思いをしたら、子どももありがたいこですから、教師と生徒の関係も良くなります。

2つ目の観察力アップは教員のスキルとしても、
大変役に立ちます。

学校生活の様子のメモ

メモの目的は、「生徒の様子を保護者に伝える」、また「教師の生徒に対する観察力を高める」です。

電話連絡する頻度はどれくらいがおすすめ?

上記の「生徒の良いとこメモ」をもとに、
学期に一回を目標に電話連絡をします。
私は6月、10月、2月にしていました。

たまたま別の用事で連絡を取ったり出会ったりすることがあった保護者は、
時間が許せば、
その時に生徒の様子を話しておきます。
すると電話連絡をする家庭は
3分の2くらいになっています。

2月は、
風邪など体調不良で生徒が欠席したいたら、
「体調はどうですか?」と
様子伺いを兼ねた電話連絡となったことも多かったです。

三者面談や家庭訪問との日程が近づきすぎていなければ、
夏休みや冬休み中でもいいです。

何か問題があったときだけの連絡にならないようにするためです

何の記録もない(メモ)生徒はどうするの?と
思われるかも知れませんが、
メモを続けていると、
必ず見つけることができるようになります。

それまでは、「家での様子はどうですか?」で、
学校での生活の様子のメモがなくても大丈夫です。

シングルファーザーとして娘を育てているお父さんの話です。

学期一回の電話をしていると
次は、お父さんから
学期に一回程度、
子育て相談の電話がかかってくるようになりました。

子育て相談というより、
年頃の娘を父親一人で育てるにあたっての
不安と愚痴が多かったですが、、、。

こういう関係が出来ることは生徒の健やかな成長には欠かせません。

学期一回の電話と並行して
「通信の発行」もできるようなら実行しましょう。

記事「若手教員のための効果が期待できる学級通信の作り方と実際の効果を教員歴35年が回顧」
を参考にしてください。

保護者とのいい関係を作るうえで、
欠かすことができないコンタクト方法です。

電話連絡

保護者は、我が子の学校での様子がわかると嬉しいです。

テクニック②面談は認識のずれが生じないように原則複数の教員同席でする

  • 保護者と話すとき、基本は両親と複数の教員で

父親と母親で方針や意見が異なることが多いです。
両親で受け取りがすれ違ったことにならないようにします。

問題があった時、
その状況を認識のずれが生じないように(誤解がないように)保護者に伝えるということは
考えている以上に難しいものです。

複数の教員で対応

正しく生徒の状況を共有することが課題の解決解消につながります

保護者と話すとき、基本は両親と複数の教員で

中学3年になり、
学力の低下がみられる女子生徒がありました。

進路を目前にしての学力面のプレッシャーが要因に思えました。

父親は、
何が何でも〇〇高校進学、〇〇高校以外はありえない
言い換えると〇〇高校でないとゆくゆく大学進学に不利だし、
世間体も悪いという思いが強かったです。

対して、母親は
本人の力で進学できる高校を
という考えでした。

高校入試の学力面が大きなプレッシャーになって悩んでいる本人にとり、
親の考え方の相違、
特に父親の考え方
かなりのプレシャーとなっていました。

残念なことですが、
何回か両親そろっての面談をしましたが、
父親母親の考えの相違は埋めることができず、
生徒は登校できなくなりました。

高校受験をすることはなく(できず)
中学校卒業後、
1年間自宅に引きこもりとなりました。

しかし、両親そろった状態での面談は続けました。

1年後、自宅から離れ(親元から離れ)、
寄宿舎のある高校への進学希望がでてきました。

いくつかの寄宿舎のある高校を紹介し、
1年遅れてですが、
晴れ晴れとした表情で
高校進学をしました。

両親そろっての面談をしていなければ、
この寄宿舎のある高校への進学希望という話もまとまらなかったと思います。

教員になりたての経験の浅い時期、
このように片方の親と話した場合、
もう一方の親に話が正確には伝わっていないことが少なからずありました。
また、父親、母親で子育ての考え方が違っている場合なども、
教師(学校)との関係がぎくしゃくする原因となります。

教員も複数対応の方が保護者との関係が
こじれることが少なくなります。

ただ、保護者からの相談(訴え)でない限りは保護者が1名の時は教師は多くても2人までです。

保護者がリラックスして話をしやすい状況を作ることを心がけます。

複数対応だと誤解が生じることが少ないので、余裕をもって面談できる

複数の教員と両親で面談

テクニック③生徒の情緒不安定に関わる時は正しい情報共有のために両親と面談する

面談時の原則のようなことです。
でも、内容(状況)によっては一方の親とだけ面談のこともありました。

  • 具体例①精神面の成長の課題や遅れを感じて両親と面談
  • 具体例②女子生徒が暗い表情…家庭の状況が起因する時と判断したので面談

原則を守ると余裕を持てますから、
いい内容の面談時間となります。

子どもの健やかな成長のための面談

保護者とともに、いい方向性を確認しましょう

具体例①精神面の成長の課題や遅れを感じて両親と面談

出会って話すとき、基本は必ず両親と

情緒面に発達の課題があり、
学習面、人間関係に課題が見られる生徒がいました。

学校での学習面、人間関係の気になる点両親に伝えました。

かなり丁寧に時間をかけ、
学校での様子、中学校卒業後の進路、
ゆくゆくは就職(将来設計)の話もしました。

発達診断検査を受けてみようということになりました。
そこで、発達の課題が明確になりました。

私の息子が中2の時に学校に行きずらくなり、
その時に治療(心のケア)をお世話になった先生が
子ども療育センターにおられ、
大変信頼のできる先生でした。

私の息子のケースを話しました。
自信をもっての情報提供です。
大変興味を持たれて、
通院が始まりました。

お父さん、最初はちょっと通院が煙たい感じだったのですが、
本人が喜んで受診に行くので、
通院が続きました。

通院は中学校卒業とともに終わりましたが、
希望の高校進学もかない、
卒業することができました。

面談での注意点も書いておきます。
面談において教師のねらいとすることろは解決策を出すのではなく

情報の共有ですれ違いをなくす(埋める) 
です。
お父さんはぶっきらぼうな人でしたが、
ものすごく本人のこと(将来)を考えていることが
だんだんと伝わってきました。

そのことが私には大きな収穫でした。

親のニーズに沿った面談

正確な状況を保護者、教員で共有することが、子どもの健やかな成長につながります

具体例②女子生徒が暗い表情…家庭の状況が起因する時と判断したので親と面談

家庭の状況が起因する時、状況に応じては、一方の親とまず面談

女子生徒でしたが、
最近暗い表情をしています。

友達関係が上手くいっていない様子もなく、
学習面も心配することはありませんでした。ズバリ、本人に
最近うかない表情が多いけど、どうしたの?
と聞きました。お母さんの様子が暗くて、気がかりなんだということでした。で、この時は私とお母さんとだけで
面談をしました。本人の様子がさえなくて、
本人に話をしたら、
お母さんの様子が暗いことが気がかりということなので
と伝えました。お母さんは嫁姑の関係で、
最近辛かったそうです。これは、教師が立ち入ることができる内容ではないです。
ただ、様子だけ傾聴しました。最終的にお母さんは
話しずらくて主人に話をしていなかったけれど、
こうして子どもに影響が出ているならば、
夫婦で話をしっかりしてみると
言われました。

親の悩みを聞いたり
すれ違った両親の意見をちょっとでも同じ方向に を心がけました。

家庭の状況が起因する時、
これも解決策は示しません。

その後、夫婦でどのような話があったかは知りませんが、
生徒の様子は明るくなったので、
良い話ができ
嫁姑の問題も改善したのだろうと
判断しました。

親に寄り添った面談

親の悩みが子の不調の原因となるときもあります。

テクニック④学校不信の時は時間をかけて話を聞くことで不信の原因をつかむ

保護者のつんけんどんな教師への対応が見られるときは
過去に学校へ不信を持つ何かがあったのかもしれません。

  • 学校から保護者への説明不足が原因だった場合
  • 学校内で教員間の連携がとれていなかったことが原因だった場合
過去の、学校(教員)の対応が原因で不信感を持たれている可能性があるかもという認識を持っておくこと
学校不信というのは、何らかの過去の出来事が起因しています

学校不信の場合の対応

学校から保護者への説明不足が原因だった場合

保護者と雑談的な話から入り、
否定的に考えられていることについて少しずつ考えを聞いたケース

同和教育の加配教員として仕事をしていた時のことです。

当時、地域補習をしていましたが、

否定的な考えを持たれていて、
補習に参加をさせない保護者がある

と小学校からの引継ぎ事項として聞いていました。

その保護者とは雑談的な話から入り、
少しずつ地域補習に対しての考えを聞いていきました。

わかったことは
地域補習の目的は
「地域の子は学力が低いので、地域で特別に補習をしている」という理解で、
特に「地域の子は学力が低い」という決めつけとような部分に納得がいかないということが原因でした。
そこで、私は、
「今なお、偏見で差別を受けることを耳にする。
今後、減ってはくるだろうけれど、
将来、誤った偏見により、
本人が深く傷つくことがないとは、まだいいきれない社会です。

学校全体として同和問題に対して正しい知識や認識を育てておくことは当然の事です。

地域の子は学力もだけれど、
よりしっかりした知識や認識を育ておくことが大切と考えます。
それが、中学校での地域補習の目的です」
と伝えました。

大変、納得してもらい、
その後は地域補習への参加のみならず、
親としても積極的に協力してもらうことができるようになりました。

説明が足りていないことに起因することが意外とあるものです。
誤解がとければ、
強力な理解者、協力者にになってもらえます。

説明不足からの学校不信

正しい内容が伝わっていない、いわゆる誤解が、学校不信につながっているケースもあります。

学校内で教員間の連携がとれていなかったことが原因だった場合

学校の教育方針に否定的な思いを持っている保護者に
少しずつ話を聞いたケース

転勤直後、担任した生徒の保護者から
学校の方針に厳しい意見を聞かされました。

何回か話を聞くなかで、
過去において学校に(教育方針に関し)質問をしたが、
回答がないままということで
不信を持たれていることがわかりました。

教頭先生にそのことを連絡し、
学校としての回答が必要ですと
伝えておきました。

数ヶ月しても、
特に学校としての動きはないようでした。
過去のことで、
当時の校長先生教頭先生は転勤していますから、
動きが取れないのかと
思っていました。

そんな時、
現在の学校の教育方針についての問い合わせを私が受けました。
改めて、教頭先生にそのことを伝えました。

数ヶ月経ち、学年末になっても、
特に学校としての動きがみられません。
校長先生にじかに問い合わせると
「そういうことは何も聞いていない」
とのことでした。
で、保護者へは回答無しのまま、
校長先生も教頭先生も転勤となりました。

校区内に2つの派閥(地域をよくしようという組織)のようなものがあり、
その保護者はリーダー的役割を担っておられ、
その立場からの学校への問い合わせでした。

その派閥の対立に学校が巻き込まれないように
慎重かつ丁寧な対応が必要だったのですが、
このような思いもよらぬ連携不足が
学校不信をまねいていました。

直接、担任する生徒に関わることではなかったため、
教頭先生にだけ連絡をしていたのですが、
あの時、校長先生にも連絡をしていれば、
もっといえば、
学校としてどう対応がいいのか
他の職員にも話をしておけば、
苦い思いはしなかったなということです。

この保護者の学校不信は解消できませんでした。
私が出来たことは、
クラスの保護者にどちらの派閥の人もいましたので、
少なくとも私の学級経営の方針が
一方にだけしか伝わらないようなことはないように
配慮をしていました。

そういう関係作りは出来たので、
学校への不信感はあるものの、
担任と保護者の関係はぎくしゃくはしませんでした。

学校不信の解決や解消が難しい事象も時にはありますが、
情報提供を欠かさないことで悪化は防ぐことができます。

教員の連携不足からの学校不信

解決、解消が出来なくても、連絡を取り続ければ、悪化はしません。

終わりに

ほんのちょっとしたことの連携ミスや対応ミスが不信感につながることがあります。
保護者との対応には原則的なことがあります。

学校によりその原則が異なるかもしれませんので、
実態に合った原則を考えましょう。

あわせて大事なことは、
保護者とのいい関係は、
ほんのちょっとしたことの積み重ねです。

いい関係つくりのポイント

・生徒の様子を定期的に伝えるという関係作り

・何かを解決、解消しようと解決策探しの面談をするのではなく、
正しい状況、情報を教師と保護者とが共有すること

学校、教師、そして保護者で、子どもの健やかの成長を見守りましょう。

保護者と良い関係つくりを

連絡を取ることは、良い関係を作ることに自然とつながります。