- 若手教員が失敗しがちな中学学級経営とは
- 教員歴35年が解決方法を教えます!
- なぜ学力アップの取り組みとして「予想問題作り」が効果的なのか?
- 教員歴35年が実践した勉強が苦手な子も巻き込んで学力アップがはかれる指導の3ステップ
- 実際に35年間実践してみた結果と感想
- 終わりに
若手教員が失敗しがちな中学学級経営とは
ベテラン教員が実践している完成された学級経営を見よう見まねで実践しようとすると失敗しやすいです。
失敗する原因としては、指導内容が生徒にとっては突然に指示されることばかりで戸惑うことが多かったり、指導者側が意図した活動を生徒にさせることができないことなどが挙げられます。
- 一人一人の個性を伸ばす
- 一人一人の社会性を伸ばす
- 集団としての自治力を育てる
- 集団としての実践力を育てる
失敗しないためには、ベテラン教員が行っている学級経営をいくつかのステップに分けて、生徒にわかりやすい指導内容のステップとして組んでいくことが重要です。
ステップを組むことで、生徒にとって取り組みやすい条件を作ることができるからです。
教員歴35年が解決方法を教えます!
中学校教員歴35年を通し学級経営でとても効果的だった具体的な事例としては、学力アップの取り組みとして行った「生徒たちにテスト前に『予想問題作り』をさせること」が挙げられます。
各学期ごと3つのステップに分けて紹介します。
なぜ学力アップの取り組みとして「予想問題作り」が効果的なのか?
理由は主に次の5つを挙げることができます。
- テストの点数が上がると嬉しい!でも、勉強のポイントがわからないという生徒の思いに沿った取り組みであるから
- 予想問題を作ること自体がテスト勉強になるから
- 勉強が苦手な生徒とってはテストに出る部分がしぼり込まれているほど、勉強する気になるから
- クラスメイトが作った予想問題は、解いてみようという気になるから
- クラスの全員が予想問題を作る取り組みとすることで、学級として学力アップに向けて盛りあがるから
では、3学期には誰もが下のような予想問題を作れるようになる指導の仕方を各学期ごと3つのステップで解説していきます。
教員歴35年が実践した勉強が苦手な子も巻き込んで学力アップがはかれる指導の3ステップ
学校は3学期制の所が多いです。
テストも学期ごとにあるので3つのステップを作ることが指導面でも有効です。
3学期には学級の全員が予想問題を作れるようになるためのステップを組んでいます。
【1学期】解いてみようという気になる予想問題を作ってテスト前の学習時間を80分増やし学力をアップ
【2学期】予想問題はだれでも作れるように例えば字が奇麗でない子も作れる予想問題作りの指導をして学習時間も80分増やし学力をアップ
【3学期】勉強の苦手な子も作れる予想問題作りを指導して学習時間も80分増やして学力をアップ
ステップ ①【1学期】解いてみようという気になる予想問題を作ってテスト前の学習時間を80分増やし学力をアップ
学力アップには、テスト前の学習時間を増やすことです。
予想問題を作ることで、 4教科の予想問題(4枚)を生徒に配れば、1教科約20分として80分は学習時間が増えます。
解いてみようという気になる予想問題であるためには、読みやすい丁寧な字で書かれた予想問題であることが大事です。
読みやすいことで、解いてみようという気になりやすいからです。
そのためのポイントは3つあります。
- 原稿用紙にひとマス一字で書くときれいに仕上げられ、解いてみようという気になる
- 問題数[量]が多くなりすぎないように問題はB5用紙におさまるようにする
- 見やすい正解答があるようにする
1学期に作った予想問題はステップ②③では見本として使います。
そのため、出来るだけ字がきれいで丁寧に予想問題が作成できる生徒に作成してもらいます。
見本がいいものであれば、2学期3学期の予想問題作りの効率や成果がアップするからです。
原稿用紙にひとマス一字で書くと、字が奇麗に書けないとコンプレックスを持っている生徒でも上の予想問題のように見栄えのするものが作れます。
勉強嫌いの生徒がテスト勉強をやろうという気が起こる量がB5用紙くらいではないでしょうか。
成功のポイント①原稿用紙にひとマス一字で書くときれいに仕上げられ、解いてみようという気になる
原稿用紙にひとマス一字で書くときれいに仕上げられ、解いてみようという気になります。
予想問題を解こうという気になるかならないかは、問題の内容よりも奇麗さ丁寧さがポイントです。
そのためには印刷用の用紙を選ぶことです。
日本語ばかりの時は、【5ミリ原稿罫ヨコ】が最適。
アルファベットや数式が多い時は、【5ミリ方眼】が便利な時もあります。
初めて、生徒に予想問題を作らせるときは、国語、理科、社会がおすすめです。
5ミリ原稿罫ヨコを渡し、ひとマス一字で書くように指示がしやすいからです。
成功のポイント②問題数[量]が多くなりすぎないように問題はB5用紙におさまるようにする
問題数[量]が多くないように問題はB5用紙におさまるようにするのがおすすめです。
問題数(量)はB5サイズにおさまるのがちょうどいい量です。
上に2枚の予想問題をのせていますが、以下の点に留意して作成されています。
- やろうという気になりやすい量
- 作成する生徒にとっても負担にならない量
- 丁寧な字で書くにちょうどくらいの量
別の量(サイズ)も試してみましたが、私が指導するのにはB5サイズが最適でした。
B4サイズになると生徒もすごく頑張って作ってくれたことはわかりますが、手作り予想問題になれていない場合、活用しきれないまま終わり、もったいない感じがします。
下記画像のように、B4サイズの左半分B5の範囲を問題にし、3つに区分けをする方が成果が出やすいです。
成功のポイント③見やすい正解答があるようにする
見やすい正解答があるようにするのがおすすめです。
上の予想問題で色分けをしたように、「問題スペース」「解答スペース」「正解答」と予想問題の様式を決めておきます。
正解答が見やすくなり、答え合わせもしやすくなります。
予想問題を作るとき、生徒が作りたいように作ると様式がバラバラになります。
直接( )内の空欄に答えを書き込む問題を作る生徒が出てきます。
以下のようなことにならないために、「問題スペース」「解答スペース」「正解答」の割り振りをしておきます。
- 答え合わせがしにくい
- 答えの表示場所が人のよってまちまちになる
- 誰でも作れる見やすい予想問題の見本には使えない
ステップ ②【2学期】予想問題はだれでも作れるように例えば字が奇麗でない子も作れる予想問題作りの指導をして学習時間も80分増やし学力をアップ
実技教科も含め予想問題(8枚)を生徒に配れば、1学期に比べ学習時間が80分増えます。
そのために誰でもが予想問題を作れる指導を工夫します。
まず、2学期は字が奇麗でない子でも作れる予想問題の指導をします。
なぜなら、 特定の生徒のみが予想問題を作ったのでは、一部の生徒の学力アップで終わります。
学級全体の学力アップにはつながらないからです。
また、一部の生徒の動きだけではクラスの盛り上がりが望めません。
成功のポイントは2つあります。
- 仕事内容を示し係[委員]を選出しておく
- 問題量を減らした予想問題の作成を指示する
では、具体的な指導を次に解説します。
成功のポイント①仕事内容を示し係[委員]を選出しておく
まず、仕事内容を示し、係[委員]を選出しておくことです。
これまでやったことのない仕事をしてもらうので、適任者を選出することで教師のねらいが達成しやすいからです。
多くの学校で班という組織があると思います。
2学期は班長や班の学習係が中心になって、1学期には予想問題を作らなかった生徒も予想問題作りをすることを学級全員に伝えます。
学習係はサポーターの役割をすることを生徒は理解して、係を決めます。
成功のポイント②問題量を減らした予想問題の作成を指示する
問題量を減らした予想問題の作成を指示することです。
理由は係[委員]の作った予想問題を見ていますので、その半分の量だったら、負担にはならないからです。
テスト前になったら、 1学期に作った予想問題を見本として、 班内で、予想問題作りを2人一組で班員に割り振ります。
2学期は勉強が苦手な子には予想問題作りという無理はさせません。
それ以外の生徒は下のように予想問題の上半分または下半分を受け持ちます。
その時、その分担が上手くできるようにサポートするのが班長や学習係です。
また、ペアの一人が班長または学習係でもいいでしょう。
見本をもとに「ひとマス一字」で書くことを指示します。
ステップ③【3学期】勉強の苦手な子も作れる予想問題作りを指導して学習時間を80分増やして学力をアップ
2人で分担して1枚の予想問題を作ったりして12枚を生徒に配れば、2学期に比べ80分は学習時間が増えます。
3学期は「全員が予想問題を作った」を目標にして一年を締めくくります。
ただ、勉強の苦手な生徒が委縮しないように工夫します。
勉強が苦手な生徒もサポート体制と見本があれば、予想問題を作ることができます。
そのことは本人の学習意欲につながるし、学力アップにもつながります。
サポートする側も達成感を持つことができ、テスト前勉強の一つとしての予想問題作りの取り組みが学級として高まり、盛りあがります。
成功のポイントは3つあります
- 勉強が苦手な子には面倒見の良い子とペアが組めるサポート体制を作る
- サポートする側の生徒はどういうサポートをしたらいいか指導しておく
- 予想問題作成のための打ち合わせ時間を1時間設定する
では、具体的な指導を次に解説します。
成功のポイント①勉強が苦手な子には面倒見の良い子とペアが組めるサポート体制を作る
勉強が苦手な子には、面倒見の良い子とペアが組めるサポート体制を作ることが成功に欠かせません。
3学期は班長や班の学習係が中心になって、全員で予想問題作りをすることを学級全員に伝えます。
学習係はサポーターの役割をすることを生徒は理解して、係を決めます。
2学期同様、問題量を減らした予想問題の作成を指示しますが、 2学期と異なるのは、勉強を苦手とする予想問題なんて作れないと不安がっている生徒と班長または学習係がペアを組んで予想問題を作ることです。
2学期と同じように予想問題を上半分下半分に分け、一人が作る問題量を減らします。
成功のポイント②サポートする側の生徒はどういうサポートをしたらいいか指導しておく
サポートする側の生徒はどういうサポートをしたらいいか、事前に指導しておくことが成功のポイントです。
一度、班長と学習係を集めて、以下のようなサポートの仕方を指導します。
サポートする側の生徒は、 国語なら、テスト範囲の漢字を予想問題で作ってきて、 英語なら、テストに出る新出単語を予想問題で作ってきて、 と、ページで割り振るのではなく、確実に出る問題を示して予想問題が作れるようにサポートする。
成功のポイント③予想問題作成のための打ち合わせ時間を1時間設定する
予想問題作成のための打ち合わせ時間を1時間ほど設定するようにしてみましょう。
サポートを円滑に行うためには、ペアとなった2人の打ち合わせの時間が必要です。
原稿用紙にこのように問題を書いていったらいいという具体的なサポートも必要です。
学習が苦手な生徒が「これなら家で作ってくることができる」と思えるようなサポートを受ける時間保証をします。
もし学級活動時間枠に余裕があれば、出来上がった予想問題を学級で班単位で解く時間の設定もいいです。
実際に35年間実践してみた結果と感想
学級として学習への意識づけにつながる取り組みでした。
特に一部の生徒だけが作る予想問題の取り組みではなく、 全員で作る予想問題作りが学級としての盛り上がりにつながりました。
テスト勉強はそんなに楽しいもんじゃないですが、予想問題作りはイヤじゃないようでした。
3学期にペアで予想問題を作ると、サポートした側は、 「〇ページの…から…という予想問題を作ったらいいと言っただけなのに、丁寧に作ってくれた嬉しい!」 サポートされた側は、「予想問題なんて作れっこないと思っていたけど、教えてもらったら作れた!しかもそこがテストに出た。やった!」と喜んでもらえます。
単に学習時間をチェックしたり、学習時間を競ったりしても生徒のためにはなりません。
特に勉強嫌いの生徒にとっては何ら効果はないです。
昨年後に予想問題作りの取り組みを行い、予想問題の良い見本が残っていれば、1学期からペアでの予想問題作りを取り組むことも可能になります。
手作り予想問題集に慣れてくると、「先生、私に作らせて!」という生徒も出てきます。
問題だけで、B4版の大作を作ってくる生徒もいました。
そういう申し出をする生徒がいる雰囲気の時は、このくらいの問題量でも印刷して渡された生徒は喜んでテスト勉強に使っていました。
終わりに
素敵な学級作りができる先輩教師がおられると思います。
その人に、学級経営の指導を受けると 「慣れたら、そのうち出来るようになるよ、大丈夫、大丈夫」 と言われる時があります。
その人は本当に学級経営が上手だと思います。
ただ、本能的に上手に生徒を指導できる人もいて、そのために指導のポイントを後輩教師に上手に教えられない場合があります。
どういうステップを組み、各ステップでの生徒指導のポイントは何かを考え、先輩教師の学級経営、生徒への指導の様子を観察し、自分なりにつかみ取ることが大事になります。
最後に「知的な学級作り」の強力なアイテムを紹介しておきます。
すでに多くの解説サイトがあります。
小学校ではよく使われていると思いますが、中学校でも学級の仲間づくりも併せてできる強力なアイテムです。