ゲストティーチャー(外部講師)を活用した中学生のモチベーションアップに効果的な授業づくりと講師リストの作り方 教務経験者が教えます

ゲストティーチャーを活用した授業づくり 若手教員、教務の方へ

ゲストティーチャー(外部講師)を活用した中学生のモチベーションアップに効果的な授業づくりとは?

中学生が、より専門的な知識やスキルを学ぶこと授業への意欲向上(モチベーションアップ)がはかれるようにする授業づくりのことです。

ゲストティーチャーとは、学校外部から特定の授業に招いた講師や専門家のことを指します。
教員にはない、より専門的知識やスキルがあります。
また、社会人という教師とは異なった視点からの学びの機会を中学生に与えます。

あわせて
教師自身にとっても新しい気づきや今後の指導手法に関して学ぶ機会となります。

例えば、
最近は許可免許(免許外教科担任制度)で指導をする場合が増えています。

技術の木工領域指導時
校区内の大工さんをゲストティーチャーとして招き、
かんなの使い方講座を設けました。
講座後は教師も自信をもって指導にあたり、生徒も自信をもって木工作品制作に取り組みました。
家庭科での地域の食材を生かした調理領域指導では、
校区内の酢の醸造会社にゲストティーチャーを依頼し、
手巻き寿司調理実習を体験しました。
普段、学校給食を残しがちな生徒も残さず食べきるどころか、おかわりをもするという様子も見られました。

技術家庭科ともにゲストティーチャーは生徒の前で話をすることは初めての方でしたが、
指導する内容が実技なので、
講座や実習はスムーズに進みました。

体育祭の出し物のメインとなる演技発表
体育祭を前に新しい表現技法を取り入れたいと考えた体育祭担当教師は自らゲストティーチャーを見つけ、
講師としての招聘(しょうへい)を教務や管理職に申し出る場面も出てきました。
総合的な学習の時間の地域調べでは、
校区内の地理的を学ぶ場面で
地方振興局の出前授業制度を使いました。
校区内を流れる河川について地方振興局のゲストティーチャーから学習をしました。

この学習は思わぬ副産物がありました。
地域から長年要望があげられていたにも関わらず予算化されなかった河川改修についてです。
この学習がきっかけで、
校区の小中学生が今後も河川についての学習と可能な範囲で地域自治会とともに保全管理に携わるという条件で河川改修が予算化されました。

ゲストティーチャーによる授業により、こういった変容が期待できます。

体育祭演技ダンス練習(イメージ)

体育祭の準備の時、生徒は興味津々で、スポーツジム、ダンススクールのインストラクターから指導を受けます

効果的な授業づくりのための3ステップ

ゲストティーチャー(外部講師)を活用した効果的な授業づくりのためには
3つのステップを踏む、用意することが教務の欠かすことのできない仕事です。

① 教員のニーズに基づいたゲストティーチャー授業の企画と実施
② ゲストティーチャーを希望する教員の事前打ち合わせをサポートし、ゲストティーチャー授業を実施
③ 講師リストをもとに意欲向上をはかりたい内容を明確にしたゲストティーチャー授業の実施

なぜ3つのステップが必要か、
ゲストティーチャー受け入れのためには、
まず学校内の体制づくりが必要だからです。

教員によっては、
事前の講師との打ち合わせの煩雑さを嫌がったり、
自分以外の指導者が授業に加わることに抵抗感を持つ場合があります。
そういう状態ではゲストティーチャーを活用した授業はできません。
まず、有益な面が多いことを事例を通して知ってもらうことです。

また、ゲストティーチャー(外部講師)は中学生を相手に指導することには慣れていません。
そのことをふまえた事前の打ち合わせ、段どりが必要となります。
教員が司会進行のシナリオを作り、確認します。
上記に関して、
学校内の体制を整えるのに必要なのが①②の2つのステップです。
そのうえでより効果的な授業とするために③があります。

このステップを踏むことは、
効果的な授業ができるとともに
教師の負担減、ストレス減にもつながります。
教師自身に新しい気づきがうまれ、先に記したように学校を変えることもあります。

技術木工かんながけ(イメージ)

男女関係なく、テレビで見る、かんながけのシーンを自分が再現できることに、感動する瞬間です。

ステップ① 教員のニーズに基づいたゲストティーチャー(外部講師)授業の企画と実施

最近は許可免許(免許外教科担任制度)により自分の専門以外の教科指導を受け持つことも増えています。
許可免許で指導をする場合以外にも、指導面で困っている場合もあります。

実践例

国語の授業で、
書写(書道)指導に困っている国語教師は多いです。
高校の書道の教師をゲストティーチャー として招きました。
国語の教師自身も指導法をまじかに見ることができました。

教務がゲストティーチャーと打ち合わせさえしっかりしていれば、高校書道の教員が国語科教員に対して、生徒への筆さばき指導法を伝授してもらうことも可能です。
その伝授は国語科の教員も大変喜んでいました。

書初め講座(イメージ)

高校書道の教師の専門的な指導は生徒の意欲を高めます。

ステップ② ゲストティーチャーを希望する教員の事前打ち合わせをサポートし、ゲストティーチャー授業を実施

教員自身が教科の内容に関し知識を増やしたいと望んでいる場合があります。
理科担当教員はその傾向が強いように感じます。

実践例

高校の理科教師で気象予報士の資格を持っている教員のことを紹介すると、天気の学習で是非ゲストティーチャーとしてお願いいしたいとのことでした。
教務も打ち合わせのサポートに入りましたが、教員同士ですから、授業の流れの打ち合わせ、生徒指導の確認も比較的スムーズに進みました。

この事例以外に、高校が出前講座としてプラン化している場合もあります。
出前講座を利用し、
生物の解剖実習の時に近くの高校まで生徒を引率し、
高校生のサポートも受けながら、
解剖実習をしたこともあります。

理科出前授業(イメージ
)

高校教員からの指導はいつもの授業とは異なった緊張感の中で学びが深まります。

ステップ③ 講師リストをもとに意欲向上をはかりたい内容を明確にしたゲストティーチャー授業の実施

①②において受け入れ体制が整い、ゲストティーチャー授業の経験値が積めれば、校内で積極的にゲストティーチャー授業を取り入れていくことができます。

実践例

校区内の酒造所(お酒の蔵元)にゲストティーチャーを依頼し、
「食育として食を通して地域を理解する、
また、発酵の仕組みを学ぶ」
というやや難しいテーマでしたが、
ゲストティーチャーとの打ち合わせもスムーズにでき、
米麹から作った甘酒の試飲もありの、生徒にとって楽しい一面もあった授業を実施しました。
社会科公民の探究活動「経済の仕組み」としても校区内の缶詰会社社長にゲストティーチャーを依頼し、
マーケティングや商品の売り込み宣伝方法など学ぶことができました。 
出前授業その2(イメージ)

社会人の経験からの話は、生徒にとって興味深いものがあります。

講師候補者の探し方のポイントと講師リストの作り方

講師リスト作りは教務の大事な仕事です。

効率よくゲストティーチャーを決めることができれば、
時間の無駄を作らない、
校内の教員もリストがあることで
効果的な授業をするためのゲストティーチャー授業が企画しやすいからです。

講師を探すポイントは以下の通りです。

※教育委員会が作成した講師リスト以外に

・校区内の事業所にはエキスパートがいる
会社という組織ですから、
申し込み窓口
講師依頼ができる人など
条件がありますから担当者との詳細な確認が必要です。

・校区内の個人の事業者もその道のエキスパート
生徒保護者を中心に講師候補をしぼり、教務が相談をかけたらいいでしょう。
子どもが卒業したら講師を引き受けますよと快諾されることが多かったです。

・近隣の高校の芸術科の教師
講師派遣システムを作られている高校が多いです。

・市役所、〇〇広域振興局には専門職の講師派遣システムがある
窓口に講師一覧表、申込書等備え付けられています。

総合の時間出前授業(イメージ)

社会人の専門分野の話は、授業とは異なる学びを生徒に与えます。

教務主任間のネットワーク構築と講師リストのデータベース化

効果的な授業を作るためにできることは

市町村の教務主任会でデータベースを作ることです。

・候補者からゲストティーチャーとしてのスペシャリストの絞り込み
・その活用例
・新しいゲストティーチャーの開拓

指導の得手不得手や向き不向きがあるので、そういった情報を含んだデーターベース化したものがあると便利です。

講師リストと学校の受け入れ体制と教務主任会でデータベースが出来ていれば、ゲストティーチャー探しで走り回る必要がなくなります。
また、その学校(教務)だけが情報を持っているのでは、効果的な授業づくりの機会が減ってしまうからです。  

講師リストサンプル

項目などは学校のねらいに沿ったものを定め、作ります。講師費用の項目もあるといいかもしれません。

終わりに

知っておくと便利なこと必要なことを記しておきます。

・1時間の授業を組むけれど2時間の連続授業またはその日の最終校時に組むこと

時間を必要以上に気にせず、授業を行ってもらえます。
次の時間に延長になっても対応がしやすいです。

・中学校での実践を書いたが、小学校でもほぼ同様の授業実施が可能

違うのは、実技のゲストティーチャーとして中学校の実技4教科や理科(実験)の教員も候補にあげられること

実践例

体力づくりとして朝のランニングを全校児童で取り組んでいる小学校がありますが、「走る」ということの指導がされていないことがあります。
正しい走行フォームなどを学ぶと、無駄な動きがなくなり朝のマラソンの苦痛感減につながることがあります。

・講師費用について 

学校予算で年間枠がすでに決まっているから、1年の見通しを事務職、管理職と確認し、ゲストティーチャーの活用をすすめること。

総合の時間食育(イメージ)

学校予算に縛られる部分もありますが、学校予算を有効に利用するという視点から年間を見通したゲストティーチャーの活用が望まれます。